2017年1月24日火曜日

第6回口頭弁論を傍聴して~衝撃の土壌汚染の実態と法廷での駆け引き

<第6回口頭弁論を傍聴して>
 1月19日の第6回口頭弁論では、原告の末永さん、藤原さんの意見陳述がありました。

 末永さんは、ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクトとして、土壌汚染の実態を調査することになった経過と結果について、丁寧に話されました。調査結果を大きな地図に落としたものを弁護士さんが持ち、裁判官に見せながら説明しました。南相馬の特定避難勧奨地点周辺の196以上の地点で計測し、そのうち、放射性管理区域の基準とされる土壌の表面汚染密度1平方メートルあたり4万ベクレルを下回ったのは2地点しかありませんでした。また、50地点で、手でふれてはいけないという40Bq/m2以上の汚染を観測しました。裁判長は、手元にある汚染マップと大きな地図を交互に見ながら非常に熱心に話を聞いていました。

 藤原さんは、特定避難勧奨地点の解除に際しての説明会では解除に反対する意見しか出なかったにもかかわらず、これらの意見が反映されることはなく、解除が強引に一方的に行われたことを証言しました。しっかりした声が法廷に響き、裁判官も傍聴席を埋めた傍聴者も真剣に聞き入っていました。二人とも非常に心に残る陳述だったと思います。
 陳述の内容とその意義については、事前集会で斉藤弁護士と祐川弁護士から丁寧でわかりやすい説明がありました。こちらもとてもよかったです。

 圧巻は福田弁護士の大逆転劇でした。
 20128月に当時の原子力安全委員会が避難基準解除についてのひとつの文書を出します。文書は、原子力災害本部が原子力安全委員会に助言を求めての回答で、「緊急防護措置を解除し、適切な管理や除染・改善措置等の新たな防護措置の計画を立案する際には、関連する地元の自治体・住民等が関与できる枠組みを構築」するよう求めています。避難基準を解除したければ、新たな防護措置と住民の合意が必要だというのです。原告側はこの文書を、国による避難解除の違法性を指摘する根拠の一つに挙げていました。

 前回の法廷の後、国側は原告に対し、この文書の法的な位置づけについて釈明を求める文書を出してきました。この文書が法的には効力がないという立場での求釈明です。ところが国側は同時に提出してきた正誤表の中で以下の訂正をこそこそっと行っていました。

 (誤)原子力災害対策特別法20条に基づき原子力安全委員会が提出した文書
 (正)原子力安全委員会が提出した文書

原子力安全委員会文書の法的位置づけを説明する「原子力災害対策特別法20条に基づき」との表現を削除したのです。国側は、正誤表は語句の訂正であり、内容的な訂正ではないと説明していましたが、これは、法的位置づけについて根本的に見解を変えるものです。国側は正誤表に求釈明をかぶせ、はじめからそのように主張していたかのように振る舞い、カモフラージュしながら攻めてきたのです。

 これに対し福田弁護士はまず、求釈明について、放射線防護について専門的知識を有しない原子力災害対策本部が、専門的知識を有する原子力安全委員会に法律に基づいて助言を求めたものであり、その内容に従うのは当たり前のことだと丁寧に釈明した上で、ところでこの正誤表のこの部分は一体何ですか?「しらっと」変えているが、根本的な変更であり、語句の訂正ではすまないのではないか?と攻め返しました。
 これに裁判長が乗り、最後は原告と裁判長が一緒になって、法的位置づけについて見解を変えた根拠について、国側に逆に釈明を求める状況になりました。逆転しただけでなく、裁判所も味方につけた。すごい!

 その上、別の書面の反論の期限をめぐり、期限に間に合わないかもしれないと煮え切らない国側の対応に裁判長があきれて、「絶対に間に合わないとわけではないということですよねハハハ」と冗談めかして発言する場面もありました。笑っていますが、次は絶対間に合わせろよと釘を刺しているのです。国側の弁護士は慌てているように見えました。この瞬間に裁判長は、完全にこちらサイドに立っていました。裁判長はこれまでも原告の主張はきちんと聞きますよというような姿勢をみせていましたが、法廷の場でここまでこちら側に立ってものを言ったのははじめてだと思います。

<事前集会に参加したみなさんからの感想より>
原告、弁護団、応援、支援の方々の奮闘を願ってやみません。
土壌汚染のデータが衝撃的でした。弁護士のお話し、わかりやすかったです。住宅については地元自治体で何ができるか考えたいと思います。
勉強になりました。昨年2回富岡町に行ってショッキングな状況を見て深く考えました。これからも協力させていただきます。
少しは支援になるかなと思って参加しました。